統合失調症とは
統合失調症は、思考、行動、感情をまとめる能力が長期に渡って低下、それによって、物音に対して過敏になったり、幻覚や妄想といった症状がみられている状態を総称します。主に10代後半~30代の間に約100人に1人の割合で発症すると言われています。原因は特定されたわけではなく、脳内の神経伝達物質(ドーパミンなど)の異常説等も否定的です。
従って治療に関しては対症療法という事になります。過敏に物音に反応してしまう場合は、漢方エキス製剤の使用が有効になることもあるでしょう。また幻聴については、耳鳴りの症状を抑える処方で対応できることもあるかもしれません。ただ、どうしても向精神薬が必要という方が存在するのも事実です。
なお統合失調症は、元々予後は良好とされている病気で、向精神薬が使用されていなかった時代でも4割程度の患者さんが完全に治癒し、全体の半数程度がそれなりに日常生活を送ることができるとされ、1割ほどの患者さんが重症化するというのが、予後の比率を調べたオイゲン・ブロイラーの研究で確認されています。これに対して、現在の同疾患の再発率というのは80%以上に達するとしています。この辺の事情というのは、もう一度考え直してみる必要があるでしょう。
統合失調症の治療では、抗精神病薬が用いられてきました。この根拠となっているドーパミン仮説とは、「統合失調症の特徴はドーパミン作動性経路の過活動によるもので、原因は、シナプス前ニューロンがシナプスに放出するドーパミンが多すぎるか、ターゲットのニューロンのドーパミン受容体の密度が異常に高いかのどちらかである、それゆえ抗精神病薬によってブレーキをかければ、ドーパミン作動性経路の機能は正常に近づく」といった説に基づいているものです。
ただ実際には、これまで薬物治療を受けられていない統合失調症の患者さんのドーパミン濃度は正常であることが判明しています。また、ドーパミン受容体が統合失調症の患者さんでは過剰ではないかという説も挙げられましたが、これはむしろ抗精神病薬の作用としての結果ではないかとも思われます。そうは言っても、幻聴や妄想(陽性症状)がみられているのであれば、向精神薬(西洋薬)の使用もやむを得ないとは思われます。ただこの場合は、副作用としての、薬剤性パーキンソニズム(パーキンソン病と同様の症状(体をうまく動かせない、手が震える、前かがみになって小刻みに歩く、等)がみられる)をはじめ、様々な問題が生じてくるのを念頭に置かなくてはいけません。
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